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在宅介護では、トイレ介助をしなければならないことがあります。
介護者にとっても要介護者にとってもデリケートな行為なので、とまどいを感じることもあるでしょう。
しかし、トイレ介助は介護の原点ともいわれています。
トイレ介助をする際の手順や注意点を知って、心の準備をしておきましょう。
トイレ介助(排泄介助)は、トイレでの排泄が難しくなったり、できなくなったりした人を介助することです。
具体的には、トイレへの誘導、衣類の上げ下ろし、使用後の後始末などが挙げられますが、実際に何を手助けするかは、要介護者の状態によります。
そのほかトイレ介助では、排泄物や皮膚の状態などから要介護者の体調を確認することも可能です。
病気の早期発見につながることもあるので、ぜひ覚えておいてください。
トイレ介助では、注意したいこと、心がけたいことがいくつかあります。
排泄を手伝ってもらうことには、恥ずかしさや情けなさを感じるものです。
その気持ちをくみ、接するときには要介護者が不快な気持ちにならないよう、配慮しましょう。
排泄物のチェックは健康観察の一環ですが、あからさまな態度は厳禁です。
さりげなく確認するようにします。
なお、必要に応じて下腹部をバスタオルで覆うなどすると、羞恥心も軽減されるでしょう。
トイレへの移動、衣類の上げ下ろし、便座への立ち座り、排泄後の処理など、自分でできることは手を出さずに見守ることも大切です。
ひとつひとつの動作は、筋力や生活機能の維持につながるだけでなく、「自分でできる」という自尊心を守ってくれます。
高齢者の転倒は、大けがにつながりかねません。
手すりを設置する、介護者の体につかまりながら動いてもらうなど安全に配慮し、転倒などの事故が起きないように注意を払いましょう。
トイレを失敗すると「水分摂取を控えさせよう」という気持ちになるかもしれません。
しかし、水分不足は便秘や脱水症状を引き起こすだけでなく、脳梗塞など重篤な病気の原因にもなります。
トイレ対策としての水分制限は、よいことではありません。
場合によっては、要介護者自ら、水分を控えようとすることもあるかもしれません。
そういった様子にも気をつけ、必要な水分はとるように促していきましょう。
排泄のサイクルを把握することも、スムーズなトイレ介助のポイントです。
サイクルがつかめれば、トイレの失敗も減るでしょう。
起床時、食事前、就寝前など、トイレに行くタイミングを決めておくことも方法です。
なお、認知症を発症している場合、尿意や便意を感じても、うまく伝えられないことがあります。
ただ、そわそわと歩き回るなど、何かしらのサインも発していることも多いので、普段の様子をよく観察してみるとよいでしょう。
時間がかかると、つい排泄を急かしたくなりますが、本人のペースに合わせ、落ち着いて排泄できるようにサポートすることが大切です。
排泄介助は、本人にとっても決して喜ばしいことではありません。
介護者の気持ちも敏感に察知します。
ぜひ、おおらかな気持ちで介助してあげましょう。
排便時少し前かがみになると排便が楽になります。
要介護者のトイレでの排便の場合、クッションを抱える、前側したときに寄り掛かることができるバーを付けるなど、排便しやすい姿勢がとれるような環境を整えることが大事です。
排泄の基本はトイレですることです。
介助の手がかかるから、トイレの失敗が多いからと、安易におむつを勧めることはやめましょう。
おむつを安易に勧めてしまうと、要介護者の尊厳を傷つけてしまう結果にもなりかねません。
では、具体的なトイレ介助の手順を確認しておきましょう。
トイレに移動できる場合の介助では、要介護者のペースに合わせ、自身でできることは任せることが基本です。
介護者は、危険、不衛生なことがないように見守りましょう。
1.トイレへの移動
必要に応じて手を貸しながら、トイレまで移動します。
通路に危険なものがないかも、確認しましょう。
2.脱衣
手すりにつかまる、壁に寄りかかるなど安定した姿勢になるようにサポートし、衣類と下着を下ろします。
自力でできない場合は、介護者がサポートします。
3.便座に腰かける
手すりにつかまりながら、ゆっくりと腰かけてもらいます。
うまくできない場合は、介護者が体を支えると安心です。
腰かけたら、足が床についているかどうかを確認します。
4.排泄
安定して座っていられる場合は、介護者はいったんトイレから出て、排泄が終わるのを待ちます。
トイレのドアを少しだけ開けておくと安心です。
安定して座れない場合は、下腹部が隠れるようにバスタオルをかけ、そばで見守るようにします。
5.清拭と着衣
どちらも、本人ができる場合は、任せましょう。
自分で拭き取ることができないときは、腰を支えながらおしりを少しだけ上げてもらい、介護者がさっと拭き取ります。
着衣は、手すりにつかまるなど安定した状態で行うことが基本です。
トイレまで移動できない場合は、ポータブルトイレを利用します。
1.準備
ポータブルトイレのバケツの底に、トイレットペーパーを敷きます。
こうするとバケツに汚れがつきにくくなり、後処理も楽です。
2.トイレへの移動
体を支えながら要介護者に立ち上がってもらい、ボータブルトイレに移動します。
3.脱衣
手すりや介護者の体につかまり、着衣、下着をおろします。
自分でできるなら、そうすることが基本です。
4.便座に腰かける
体を支えながら、ゆっくりと便座に腰かけてもらいます。
足が床につき、体勢が安定しているか確認しましょう。
衝立を立てたり、下腹部にバスタオルをかけるなどして、プライバシーも確保してください。
5.排泄
トイレから離れ、邪魔にならない場所で待機します。
6.清拭と着衣
終了したら腰を支えて少しだけおしりを浮かせてもらい、前から後ろに素早く拭き取ります。
自分でできる場合は、必要なことだけを手伝います。
その後、体の安定を保ちながら、衣類を身につけます。
7.ベッドへ移動
排泄の際に力むと、血圧が上がることがあるため、体調に変化がないことを確認してから、ベッドに移動しましょう。
8.後処理
ポータブルトイレにセットしたバケツを取り外し、トイレットペーパーなどで汚れを拭き取って、排泄物とともにトイレに流します。
その後、トイレブラシと洗剤を使ってきれいにしましょう。
ポータブルトイレを放置しておくと、悪臭の原因になります。
できるだけ早く処理することがポイントです。
介護では、臭い対策が不可欠です。
要介護者はもちろん、介護者とその家族も気持ちよく過ごせるように、原因に合った方法で対策をしましょう。
介護用の消臭剤や消臭スプレー、おむつ用消臭袋も強い味方です。
これらの製品は「介護のしたく。」でも取りそろえています。
ぜひ、臭い対策にお役立てください。