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要介護者のための食事、介護食。要介護者の状態によっては、介護食を用意しなければなりません。しかし、いざ作ろうとすると「柔らかくするだけでいいの?」「細かく切れば大丈夫?」など、わからないことも出てきます。じつは、ひと口に「介護食」といっても種類があります。この記事で、介護食の種類や作り方について確認しておきましょう。
一般的には年を重ねると、噛む力や飲み込む力が弱くなってきます。食事量の減少、食事中にむせるなど症状は、その兆候かもしれません。
食事量が減ると体力が落ちます。また、食べにくい食事は、誤嚥性肺炎にもつながりかねません。噛む力、飲み込む力が弱くなってきたら、柔らかく調理する、かんてんでとろみをつけるなど食事を食べやすく工夫する必要があります。
実際にどのような介護食を用意すべきかは、要介護者のかむ力や飲み込む力がどのくらいあるかによって異なります。例えば日本介護食品協議会が定める規格「ユニバーサルデザインフード」では、商品ごとに「容易にかめる」「歯ぐちでつぶせる」「舌でつぶせる」「かまなくてよい」の4段階に分けています。参考にしてみるとよいでしょう。
このように、要介護者が食べやすいように工夫した食事が、介護食です。
介護食は、調理の形態によっていくつかの種類に分けられます。それぞれの調理の特徴、どのような人に適しているのか、確認していきましょう。
刻み食は、噛む力が弱くなった要介護者のために、通常よりも食材を細かく切って調理した食事です。どの程度まで細かくするかは要介護者の状態にもよりますが、飲み込む力が維持されている方に適しています。あるいは、大きく口を開きにくくなった方にもおすすめです。
ただし、焼き魚など食材によっては、細かくするとパサパサして、かえって食べにくくなることがあります。その場合は、とろみをつけるなどの工夫をするとよいでしょう。
軟菜食、やわらか食、ソフト食は、舌や歯ぐきですりつぶしながら食べられるくらいやわらかく調理した食事です。噛まずに食べられるため、噛む力が低下した要介護者に向いています。歯がない、歯の状態がよくないという要介護者にもおすすめです。飲み込む力が弱くなっている場合も、この調理法にすると食べやすくなるでしょう。
食材の形、色、味は、一般的な食事とほぼ変わらないので、食べる楽しさも維持できます。
食材をやわらかく調理し、さらにミキサーですりつぶすなどしてムース状に成型した食事が、ムース食です。成型には、とろみ剤などを使います。
特徴は、噛む必要がなく、のど越しがなめらかなこと。そのため、噛む力だけでなく、飲み込む力が弱っている要介護者も安心して食べることができます。誤嚥のリスクを低くしたい場合の食事としても、おすすめです。
ゼリー食は、ムース食のようになめらかにすりつぶした食材を、ゼラチンや寒天などでゼリー状に固めた食事です。噛まずに食べられることはもちろん、つるんと、滑らかにのどを通ることが特徴といえるでしょう。要介護者の状態で、固さなども調節できます。
噛む力、飲み込む力にかなりの低下が見られる要介護者向きの食事です。
調理した食材に、スープやだし汁などを加えてミキサーにかけ、ポタージュ状に仕上げた食事が、ミキサー食です。
噛む力、飲み込む力、どちらもほぼ機能していない要介護者向きの調理法といえます。
ただし、口の中で食材をまとめることが難しく、むせたりせき込んだりすることがあるので、その点は注意しましょう。
流動食は、水のように体内に流し込める食事です。具を除いたみそ汁やスープ、おかゆの上澄み液として利用される重湯などが、該当します。
基本的には手術後など、胃腸に負担をかけないための食事ですが、流動食のメリットは、ストローが使えることです。そのため、寝たきりの要介護者の食事として提供されることもあります。ただし、栄養面は不足しがちなので、その点は注意が必要です。
要介護者の状態に合わせて調理の方法は変わりますが、基本的なポイントは同じです。介護食を作る際は、以下のことを心がけていきましょう。
噛む力、飲み込む力が衰えると、それまで普通に食べられていた食品も、食べにくくなってきます。献立を考え、食材を選ぶ際は、その点を考慮しましょう。
高齢者にとって食べやすい食品として挙げられるのは、バナナやヨーグルト、豆腐のように、そのまま食べられるものです。なめこ、もずくなど、ぬめりのある食品も、のどを通りやすいでしょう。
逆に食べにくいのは、パサパサして水分が少ないもの、口の中でまとまりにくいものです。例えば、パンやビスケットなどが挙げられます。
筋が多い野菜や肉、皮つきの肉や魚、かまぼこなどの加工食品も食べにくい食品です。
栄養の偏りは、筋力や体力の衰えを招きます。
特に高齢者の食事では、体作りの土台となる良質のたんぱく質の摂取が欠かせません。主食に多品目の野菜を組み合わせ、栄養バランスのとれた食事作りを心がけましょう。
食事がうまく飲み込めないと、気管に入ってしまいます。いわゆる誤嚥です。高齢者の誤嚥は、肺炎や窒息など、命の危険につながります。
ムース食やゼリー食のように、スムーズにのどを通る調理を意識するとよいでしょう。
塩分のとりすぎは、高血圧、腎臓病など、さまざまな病気の原因です。
もちろん塩分も生きていくうえでは必要不可欠ですが、使いすぎないように気をつけないといけません。
料理の盛り付け、それぞれ調理されたおかずなどの整形も食事意欲に影響します。おいしそうに見えるように、盛り付けにもこだわるとよいでしょう。
食事は、日々の楽しみのひとつでもあります。たとえ介護食が必要になったとしても、その楽しみは享受できるように工夫することが大切です。
食欲のわく色合いや盛りつけ、コミュニケーションをとりながらの食事、食べやすい食器や食べこぼしが気にならない食事用介護エプロンの使用など、さまざまな形でサポートしていきましょう。
介護で食事作りが必要になったときには、お伝えした内容を参考に、要介護者の状態に合った食事を用意しましょう。市販品を利用することも、方法です。介護グッズを取りそろえた「介護のしたく。」でも、栄養バランスのとれた介護食を用意しています。まとめ買いをしておくと、忙しいときにも便利です。市販品も上手に活用しながら、要介護者の食事をサポートしていきましょう。
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