食事介助の注意点とは? 押さえておきたい正しいやり方

食事介助の注意点とは? 押さえておきたい正しいやり方

介護では、さまざまな場面で、行動をサポートする介助が必要となります。食事介助もそのひとつです。食事のお手伝いは簡単とも思えますが、実際に食事介助をすると、「この方法でよいのか」と悩んだり、食べてもらえなくて困ったりすることもあります。食事介助の注意点を知り、正しい方法を覚えておきましょう。

食事介助とは?

食事による栄養摂取は、生きていくうえで欠かすことができません。しかし、年齢を重ね要介護状態になると、ひとりでは食事をとれないケースが出てきます。
食事介助とは、そのような要介護者をサポートすることです。例えば、お惣菜を食べやすく切り分けたり、スプーンで口に運んだり、水分を補給したりといった行為が該当します。

食事介助が必要になる理由

高齢になると、なぜ食事介助が必要になるのでしょうか。主な理由として、次のことが挙げられます。

ひとつは、筋力など身体面の衰えです。

筋力が衰えると、それまでは持てていた食器を持つことができなくなるだけでなく、箸やスプーンも、上手に使えなくなります。これでは、自力で食事をとることは難しいでしょう。
筋力の衰えは、噛む力、飲み込む力も低下させます。しっかり噛めないと、のどに詰まらせる恐れがあり、危険です。飲み込む力の衰えは、誤嚥のリスクも伴います。

身体面の衰えが見える要介護者には、誰かがそばにつき、食事のサポートをすることが必要不可欠なのです。

認知機能の低下や障害も、食事介助が必要となる理由として挙げられます。

食べ物を食べ物として認識できなくなることもあるでしょう。空腹感を感じにくくなり、食事の時間を忘れてしまうこともあります。

高齢者の食事に関して知っておきたいこと

適切な食事介助をするためにも、高齢者と食事の関係について知っておきたいことがいくつかあります。

まず、好まれる食事の傾向についてです。

高齢者は、嗅覚や味覚が衰えることもあり、濃い味つけの食事を好むようになります。それまでと同じように調理していても、「味が薄い」といって食べたがらなくなったり、調味料を追加しようとしたりするかもしれません。嗅覚が衰えた場合、食事自体に興味を示さなくなることもあるでしょう。

また、噛む力が衰えると、やわらかいものを好むようになります。入れ歯を使うなど、歯の状態がよくない高齢者が多いことも理由のひとつです。

食事の介助をする側として気をつけたいのは、パン、サツマイモ、ビスケットなど、水分が少なく乾燥した食事は、唾液の分泌が減るため、飲み込みにくくなることです。むせる原因にもなるので、与える場合は水分やとろみをプラスするとよいでしょう。

もうひとつ知っておきたいのは、高齢になるとのどの渇きに気づきにくくなることです。渇きに気づかなければ、水分を要求することもありません。介護者が、意識的に水分補給を勧めることが大切です。

そのほか、消化器官の衰えが、食欲不振につながることもあります。ただでさえ、噛む力、飲み込む力が弱まり食事への意欲も失いがちです。

高齢者にとって食事は、ハードルの高い行為になりつつあることを、ぜひ心に留めておきましょう。

食事介助の注意点

実際に食事介助をする際の注意点について、押さえておきましょう。

食事前の注意点

用意した食事は、楽しくおいしく食べてもらいたいものです。そのためにも、食事前には、次のことを心がけます。

まずは、排泄をすませておくことです。食事の途中でトイレに行くとなると、食事を中断しなければなりません。ポータブルトイレを利用している場合は、においも気になるでしょう。落ち着いて食事をとるためにも、大切なポイントです。

トイレがすんだら、うがいや歯磨きをして、口の中を清潔にしておきましょう。口の中がさっぱりすると味を感じやすくなり、唾液の分泌も促されます。口の中が汚れた状態での誤嚥によって引き起こされる、細菌感染リスクも軽減できます。一緒に手洗いも、済ませてください。

テーブルでは、要介護者が食べやすい姿勢をとらせ、必要に応じてエプロンを装着します。食べる意欲を高めるためにも、「今日のごはんは、〇〇だよ」といった声をかけてから、食事を始めましょう。

なお、介護者は、要介護者の隣に座ります。正面に座ると威圧感を与えることもあるので、ご注意ください。

食事中の注意点

食事は、みそ汁やスープなど、高齢者にとって食べやすい水分の多いものから介助することがポイントです。

その後は、主食、副食、水分が交互になるように、口に運びます。こうすれば、栄養バランスの偏りなく、食事ができます。

ただし、1回分の量には、十分に気をつけてください。ティースプーンに1杯分くらいを目安にし、様子を見ながら要介護者にとっての適量を把握するとよいでしょう。

スプーンを下唇に乗せ、3分の2ほどを口の中に入れ、上唇がおりて口が閉じたら、スプーンをまっすぐ引き抜きます。

また、口に入れた食事がしっかりのどを通ったかどうかを確認することも重要です。次から次へと食事を口に運んだり、急かしたりすることは、事故につながりかねないので、十分に気をつけましょう。

食事後の注意点

食事を終えたら、片付ける前に、食べた量を確認します。栄養状態だけでなく、健康状態や体調把握のヒントにもなります。必要に応じて服薬の介助をし、歯磨きも済ませましょう。

なお、食べてすぐに横になると、食事が逆流してくる危険があります。30分~1時間程度は、上体を起こした態勢を保つようにしてください。

まとめ

高齢になると、食事の場面でも不自由が生じます。食事介助の注意点を理解し、要介護者が、リラックスして食事が楽しめるように心がけていきましょう。なお、調理法については「介護食の種類や作り方などを解説」で説明しています。また、「介護のしたく。」では、介護食、食事用のエプロンなども扱っています。ぜひ、ご活用ください。

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