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要介護者が寝たきりの状態になったとき、気をつけたいことのひとつに、床ずれがあります。床ずれは、痛みや不快感を伴うだけでなく、感染症を引き起こすこともあるため、注意が必要です。ただし、適切な処置により症状はよくなりますし、床ずれの発生自体を予防できます。床ずれの原因、対策を知り、日々の介護に生かしていきましょう。
床ずれとは、長時間にわたり体の特定部位が圧迫されたり、こすれたりすることで生じる傷や皮膚の障害です。該当部位の血流が悪くなり、皮膚や皮下組織に酸素や栄養が届かなくなることで発症し、医学的には「褥瘡(じょくそう)」といいます。寝たきりの方に多く見られますが、同じ態勢で座り続けたときにも見られる症状です。
初期症状は、皮膚に赤みが出ることです。放置しておくと、水ぶくれができたり、皮膚がめくれたりという状態へと進行します。さらに悪化すると、血液や体液がにじみ出る、皮下組織や骨が壊死するなどの症状が見られるように……。
じつは、この傷から感染症を引き起こすこともあります。介護者としては、注意を要する点といえるでしょう。
床ずれが起きやすいのは、骨が突出しているなど、寝たり座ったりしたときに圧迫されやすい部位です。
仰向けに寝ている状態では、おしりの上部中央に飛び出ている仙骨、肩甲骨、かかと、後頭部などによく見られます。
横向きに寝ている場合は、太ももつけ根の外側の大転子と呼ばれる骨、骨盤の腸骨、膝やくるぶしのほか、耳、肩、ひじも好発部位です。
うつぶせでは、耳、肩、膝、つま先に発症しやすくなります。さらに男性は性器、女性は乳房にできることもあるので、覚えておきましょう。
車いすなどに座った状態では、座面にあたる座骨や尾骨、背もたれにあたる背骨が、床ずれになりやすい部位です。ひじかけに手を置いておくことが多い場合は、ひじに発症することもあります。
床ずれの原因は、体の特定部位を圧迫され血流が悪くなることとお伝えしましたが、その点も含め、もう少し掘り下げてみましょう。
骨が突出していると、体の重みが分散されず、その一部分で体重を支えなければなりません。部分的によれたシーツが、体の一部を圧迫することもあります。
また、ベッドや車いすから移動しようとして体を引きずったときの摩擦も、床ずれの原因です。特に、皮膚が乾燥している高齢者にとって摩擦は、大きな刺激になります。逆に、おむつなどで湿りがちになった皮膚が弱っていることもあるでしょう。この場合も、摩擦の刺激を受けやすくなります。
圧迫や摩擦も血行を悪くしますが、むくみなど、もともとの血行不良も、床ずれの原因となります。
高齢になり食事量が減ると、栄養不足になりがちです。栄養不足になると、体の組織も衰えてしまいます。抵抗力や治癒力も低下するでしょう。この状態も、床ずれを誘発します。
抗がん剤、ステロイド剤など、服用している薬によっては皮膚が感染を起こしやすくなり、床ずれの原因になることもあるので、注意が必要です。
床ずれは、予防することができます。また、適切な対策により、できてしまった床ずれを治すことも可能です。その方法を説明します。
同じ部位への圧迫や摩擦を防ぐためには、定期的な体位の変換が効果的です。
寝たきりの場合は、仰向け、右向き、左向きと、約2時間に1回は、体の向きを変えてあげるようにします。
車いすの場合は、1時間以上、座りっぱなしにならないようにします。立ち上がって歩く、ベッドに横になるなど、15分ほどは車いすから離れる時間を作ります。
なお、体位を変えるときは、シーツや衣類にしわが寄らないように注意しましょう。せっかく体位を変えても、しわがあると、床ずれのリスクとなります。
高齢になると、のどの渇きを感じにくくなるため、皮膚も乾燥しがちです。
適切な水分補給をして、内側から体を潤しましょう。血液など、体内の循環もよくなります。
低栄養状態は、床ずれが発症しやすくなるだけでなく、治りにくさの原因でもあります。
皮膚や筋肉、血液のもととなるたんぱく質のほか、ビタミン、ミネラルなどがとれるバランスのよい食事で栄養状態を改善することも、床ずれ対策では大切です。
体の重みを分散する静止型マットレス、エアマットレスなどの寝具も、床ずれ予防には役立ちます。さまざまなタイプがあり、介護保険でのレンタルも可能です。
必要に応じて、体位変換器、体圧分散クッションの利用も検討するとよいでしょう。
汗や排泄物で皮膚が不衛生にならないよう、清潔を保つことも、床ずれ予防のためには欠かせません。特に汚れがたまりがちな箇所は、丁寧に清浄してください。定期的な入浴は、血行不良の改善にもつながります。
長時間寝返りができない状態が続くと、衣類のタグや紐、シーツのしわなど、ほんの小さなものでも皮膚に圧力が加わり床ずれの原因となることがあります。衣服やシーツにしわがよらないように注意しましょう。
乾燥しがちな肌を保湿することも、効果的です。皮膚が健康になれば、摩擦などの刺激も受けにくくなります。
個々の原因や症状に合った対処法を医師や看護師に聞いてみることも大切です。症状を悪化させる前に専門家に相談することも検討しましょう。
床ずれには、感染症のリスクがあります。単なる傷と思わず、適切な対策をとりしっかり予防しましょう。肌への赤みが発生するなど床ずれができる前のなるべく早い段階で医師や看護師など、専門家に相談することも大事です。
軽傷のうちに対処すれば、早期治癒にもつながります。そのためにも、原因を理解し、適切に対処しましょう。なお「介護のしたく。」では、体を清潔に保つからだふき、おしりふきをはじめとした介護用品を取りそろえています。ぜひ、ご活用ください。